「あたしの、友達が……今、真咲に告ってるんです」

「え。そうなんだ。やっぱりモテるんだね心矢くん。中学の頃から手紙とかたくさん持って帰ってきてたもんなー」


そう話す京香さんは、完全に他人事な雰囲気。

真咲の気持ちには気づいてないのかな?

……いや、京香さんならそれくらい簡単に察しがつきそうなものなのに。


「あの……聞いてもいいですか?」

「なぁに?」

「真咲のこと振ったって……本当なんですか?」


京香さん以外に誰もいないらしいお店の中は、とっても静か。

あたしの質問のあと、しばらく京香さんが黙ってしまったから、余計にそれが際立つ。

ぱちぱち浮かんで消える、炭酸の小さな音が聞こえるくらいに。


「……それを知ってるってことは。ココちゃんは、心矢くんにとってやっぱり特別なんだね」

「え?」


あたしの質問の答えは……?

怪訝そうに眉根を寄せるあたしに、京香さんがふふっと笑う。


「心矢くんのことはね。振ったよ、何度も」

「何度も……?」

「そう。何度断っても、“俺は諦めない”って、その繰り返しで。私が家庭教師をやめたあともしばらくはそうだったんだけど、彼が高校二年生に上がってからかな。

連絡もよこさなくなったし、このお店にも来なくなったし、やっと気持ちの整理がついたのかなと思った頃に、ココちゃん連れて来たのよ」


だからね、と京香さんは続ける。


「嬉しかったんだ。心矢くんが私を卒業して、大切な人を見つけられたこと」