その夜パパが帰ってきてからママとパパは2人で深刻な顔で話し合っていた。
 
 
 
私はその様子を扉越しに不安になりながら見つめることしかできなかった。
 
 
 
夜が怖い。
寝たらもう起きれないかもしれない。
そんな恐怖が私を襲う。
 
 
 
「姉ちゃんどうしたの?」
 
 
 
突然後ろから肩を触られて話しかけられた私は飛び上がってしまった。
 
 
 
「えっ…ごめん。気づかなかった。
 
 
な、何かあったの一哉?」
 
 
 
「いや、何もないけどそんなところでコソコソとどうしたのかなって思っただけだよ。」
 
 
 
「ごめんね…なんでもないの。
 
 
 
ねぇ一哉。一哉はもし明日死ぬかもしれないってなったらどうする?」
 
 
 
何聞いてんのよ私。
弟にそんなこと聞くなんて私の精神もついにダメになったか…。
 
 
 
「うーん。どうだろ。
 
 
でも俺は明日死ぬってなっても今日を精一杯生きるかな。」
 
 
 
えっ…。
 
 
今日を精一杯生きる?それだけ…なの。
 
 
 
明日死ぬんだよ?
死んじゃったら今日頑張っても意味ないじゃない。
私はそう言いたかった。
 
 
 
だけど一哉目を見てると不思議に精一杯自分にできることをしたくなった。
もし私が絶望の部屋に参加したってパパもママも生きて出てきたんだ。
 
 
だったら私も死ぬとは限らないんだから悩んでたって意味ないよね。
 
 
「ありがとね一哉!
 
 
元気でたわ。またなんか奢ってあげる。」
 
 
 
「急に元気になったな…。まぁいつもの姉ちゃんらしくてそっちの方がいいけどさ…
 
 
あと…悩んでるなら1人で悩んでないで俺にも相談しろよな…その、あの一応弟何だからさ。」
 
 
 
私は誤解していたみたいだ。
一哉は憎たらしいだけじゃなかった。
いつだって私のことを考えてくれてたんだ…。
 
 
ごめんね一哉。
 
 
「ありがとね一哉。」
 
 
 
私は目に溜まる涙を必死に堪えながら一哉を抱きしめた。
 
 
「お、おい。やめろよ恥ずかしいだろ。」
 
 
 
2つ下の弟にこんな大事なことに気づかされるなんて…
 
 
そうだ。まだ死ぬと決まったわけじゃない。
もし参加することになっても生きればいいんだよ。
 
 
私頑張るよパパ、ママ。