ばたん。
 玄関のドアが閉まる。用心深く鍵をかけ、スニーカーをぬぐ。

 どうして、シノノメさんの手紙があそこになかったのだろう。やっぱり、考えられるのはすでに風に飛ばされてしまった場合。
 それならもう、探すあてはない。

 まあ、シノノメさんとはそこまで仲が良いわけではないし、手紙の内容も大したことじゃないよね。たぶん。

 無理矢理自分を納得させ、廊下を歩く。リビングに戻ったら、何をしよう。とりあえず自分の部屋に戻ってシノノメさんの名刺を確認しようかな。そうしよう。

 私はリビングへと向かう。そこには、朝にはいなかったおばあちゃんがコタツにいた。

「あ、おばあちゃん。起きてたんだね」
「キョウコちゃん、ちょっといい?」
 神妙な顔つきでおばあちゃんは私を手招きする。

「ん、何?」
「これはいったい……何なんだい」

 おばあちゃんはそう言って、コタツのなかから私が探していたものを出した。探し求めていた――、

「あ……そ、それって……」

大量の手紙を。