「寒い……」
 今日は風が強めだ。早めに起きて正解だった。

 玄関先の草むらから、昨日隠した手紙を探す。ざわざわと草に手を忍ばせる。
 風に揺られて、いちいち髪が私の頬を撫でるのがうざったい。まとめてくればよかったな。集中力が削がれていくよ。

 大型トラックほどの広さの草むらのなかを探る。探る。探る。おかしい。これほどの広さしかないのに、手紙が見つからない。どうして。
 どこかの豪邸の庭園でもないのに、手紙が見つからないはずはない。

 私が寝ている間に突風が吹いたのかしら。ああ、あり得るかもしれない。雨が降った様子もないし、考えられるのはそれくらいしかない。

 探すといっても、もう隠した草むらは探し終えた。きっと手紙はみつからない。

「そんなー……」
 私はガックリと肩を落とし、力なく玄関へと戻った。