「!!」
 素早く上体を起こし、辺りを見回す。

「……また、夢……」

 ストーカーに追いかけられた日もこんなことがあった。終われたり、殺されそうになったり。でも相手の姿はわからない。
 まあ、当然か。だって私は相手の顔を見たことがないしね。

 それにしても、いつまでこんな夢を見続けるんだろう。
 私がストーカーと結ばれる。それで解決するはず。
「……嫌だわ」
 意味もなく枕を叩く。

 人の後をつけるような異常者と結ばれるだなんて、そんなのは絶対に嫌。
 そう。昔から私はいわゆる「ヤンデレ」の良さがわからなかった。普通に愛し合うのが、相手を思いやった愛の形じゃないの?

 わからない。

 そうやって頭を動かしていると、夢のなかで思い出したあることが浮かんだ。
「そうだ。手紙を読まなきゃ……」

 夢のなかで男は「読むな」と言っていたけれど、夢のなかのことを気にしていたららちが明かない。
 現実は現実。夢は夢。そうやって割りきらなきゃね。

 だからといって、今すぐにシノノメさんの手紙を読む勇気はないのだけど。