気のせいなんかじゃない! 絶対に誰かが私の後ろにいる! 別に、私と同じ道を歩いているだけかもしれないけれど、姿が見えないのはおかしいじゃない。私に見せないようにしているんだったら尚更よ……!
もう勘違いだとか、そうでないとか関係ない。走る。逃げる。逃げるべき。
私は一目散に駆け出す。スニーカーの音も、「ヤツ」の生み出す音も、なにも耳に入らない。
そう、私は走っている。なのに。
なぜだか、私と地面が近くなっていく。
いやね、そんなに近くなったら顔を地面にぶつけちゃうじゃない。
どうして。
体がいうことを聞かず、私と地面がぶつかった。倒れたのだ、と、そのときやっと自覚した。
いや、そんなことを考えている場合じゃないわ。逃げなきゃいけないのよ。何で逃げなきゃならないかってそんなの、後ろにいる「ストーカーもどき」から解放されないといけないからに決まってるじゃない。
だから早く起き上がって逃げなきゃいけないのに……。
ああ、ついに意識まで怪しくなってきた。目の前がぼやけてくる。それと同時に、近づく気配。
来ないで。いや。いやだ。
それでも私の体は動かない。
来ちゃいや。やめて。絶対に来ないで。来ないで。来ないで! 来るな! 来るな! 来るな! 来るな来るな来るな!
来るな来るなくるなクルナ クルナ クルナ クル ナ ク
それだけを考えて私は意識を手放した。