「シノノメさん」
「はい。どうしました?」

 いや、どうしましたじゃない。

「手紙を送ってきたのはシノノメさん、なんですよね」
「そうですよ」
「なぜあんなにたくさん送ってきたんですか」

 それはあなたがストーカーだからですか、という問いは隠す。シノノメさんの反応を見るために。

「たくさん?」
「だって送ってきたのはシノノメさんでしょう?」
「いえ、手紙をキョウコさん宛に送ったことは否定しませんよ」

 ですが、と彼は一呼吸おいた。

「僕が送ったのは一通だけです」

 そして彼は付け加えた。さっきのは冗談ですよ、と。

 一通?あのなかの一通?
 え?じゃああの大量の手紙の差出人は……
「誰なの……?」

 犯人を突き止めたと思ったのに。これで後をつけられることはもうないと思ったのに。あんなに恐ろしい夢はもう二度と見ないと思ったのに……!

 期待は全て裏切られた。じゃあ私はまた被害者にならないといけないわけ? あの恐怖を、ずっと?

「そんなの、い、嫌……」
 なくなり始めた寒気が再び背中に戻り、私はその場に膝から崩れ落ちた。