「手紙の存在をなんで知っているんですか」
私が言うと、
「そりゃ、僕が出したからね」
と、彼はあっさり答えた。
私はおばあちゃんに心配をかけぬよう、疑惑のシノノメさんと小声で話す。
「……あんなに大量に送ってくるなんて、気持ち悪いですよ」
「ん?」
ん? じゃない。ネタはあがってるのよ! と、まるで私のなかに取り調べ室があるようだ。
「とぼけるのも、いい加減にしてください。私に大量の手紙を送りつけてきたのは、シノノメさんなんですよね」
私が眉間にシワを寄せて問い詰めると、彼は爽やかな笑顔でこう言った。
「……バレた?」
と。
「……っ! 最低!!」
オマエカ!! 心の奥深くから、黒くドロドロとした憎悪が目をさます。昨日追われた恐怖。ふざけるな。私は夢まで見たというのに、なんでコイツは堂々と私の前に現れる?
黒い。黒い。私の心がどこまでも深く染まっていく。
「このストーカー野郎!!」
自分の感情のままに、体を動かす。
パンッ!!
私は会って間もないシノノメさんの顔を、思いきり平手打ちした。
しかし。
私の恐怖はさらに大きくなる。
私に殴られたシノノメさんは笑っていたのだから。