かかとまで靴を履かなかったおかげで、私と靴は素早く分離する。

「おばあちゃーん、朝刊取ってきたよ!」

 わざとらしいほどに元気よく、スキップで廊下を移動。隠せ、隠せ。おばあちゃんに悟られぬよう。

 おなじみの廊下を抜けると、すぐそこにあるリビング。そして、やはりおばあちゃんがいる。
「あらあら、お疲れ様。キョウコちゃん、珍しく遅かったわねぇ」
 どくり。心臓が跳ねる。
「あ、ああ。ちょっとね」
「そうかい。まあ、早く手を洗って、朝ごはん食べちゃいなさいね」

 言葉を濁してしまったものの、幸い、おばあちゃんには感づかれなかったようで。私は安堵の息をもらす。

 ストーカーとおばあちゃん。大きな二つの存在に挟まれて、少し息が苦しい。

 まあいいや。手を洗おう。
 そう思い、洗面所へ行こうとしたその時。

 ピーンポーン……

 なぜだか私の寒気を誘う、嫌なインターホンが鳴った。