「皆、下がれ!油断するな」

兵達がざわつき始めた。

大蛇の姿だったエリーシャが、ゆっくりと人の形にかわり、もとのエリーシャへと戻っていったのだ。

それを見た愛世がフワリと笑った。

「エリーシャ、私と行こう」

その時である。

真っ赤だった満月が銀色に変わり始めた。

それと同時に辺りが昼間のように明るく変化する。

「…エリーシャ…」

どこからともなく低い声が響き渡り、エリーシャが弾かれたように空を仰いだ。

「ギアス…?ギアス、あなたなの?!」

……ギアス……?!

アルファスがザリンダルを構え直し、ディアランもまた、兵達に指示を出しながら剣を持つ手に力を込めた。

「エリーシャ、もういいんだ」

その声は優しさに満ちていて、エリーシャはたまらず泣きながら叫んだ。

「ギアス、ギアス何処にいるの?!お願いだから姿を見せて」

「ああ、ここにいる。だからもう泣かなくていい」

エリーシャに応えるかのように、銀色の月を背に一人の男性が浮かび上がった。

「ギアス……!!」

エリーシャが涙を流しながら微笑む。

ギアスはそんなエリーシャに頷くと、静かな声で語りかけた。