思わず胸の疑問がエリーシャの口を突いて出る。

「…お前は……本気なのか?自分以外の者のために本気で命を捨てるのか」

愛世は泣きながらも爽やかに笑った。

「エリーシャ。友達になりましょう。これからは私があなたの傍で今までの苦しみを聞いてあげる、全部。だからもう憎しみは捨てよう。私と行こう。私がずっと傍にいるから」

アイセ……!

胸の中に渦巻いているどす黒い霧が、ゆっくりと溶けるように薄くなる。

身体中に絡んでいた見えない鎖が徐々に外れていくような感覚。

「ううっ……!」

エリーシャは泣いた。

愛世の本気を感じて、たまらずに声をあげて泣いた。

今まで一度も自分達の苦しみを理解しようとしてくれた者などいなかった。

忌み嫌う者こそ大勢いたものの、こんな風に関わってくれようとした人間などいなかったのだ。

カルディの家は城から遠く離れていたし、馬に乗れない愛世には過酷な道のりであったに違いない。

その上カルディは誰にでもザクシー族の歴史など語る人間ではない。

もしかしたらカルディも、ギアスと同じ輝きを含んだエリーシャの瞳に、希望を見出だしたのかも知れない。

エリーシャは、自分の身体が軽くなるのを感じた。

苦しかった呼吸も次第に和らいでいく。