愛世は痛みに震える身体を精一杯抑え、エリーシャを見つめた。

「エリーシャ。私で許して」

……なんだと……?

訝しげに眉を寄せるエリーシャに、愛世は頷いた。

「私を殺していいわ。でももうこれで最後にして欲しいの。この国には罪もない人が沢山いる。ティオリーン帝国を滅ぼすなんてやめて。代わりに私の命をあげるわ。お願いだからそれで許して」

「アイセ!何を言ってる?!」

「それは駄目だ!」

ディアランとアルファスが同時に叫んだ。

エリーシャは、信じられない思いで眼を見開いた。

「何故だ?お前には関係がないだろう」

「…私は…この国が好きなの」

そう呟いた愛世の顔が幸せそうに見え、エリーシャは胸に生まれた疑問をぶつけた。

「…お前は何者だ?一体どこから来た?まさか死が怖くないわけではなかろう?いくらこの国が好きでも、自分の命と引き換えにする価値などあるまい」

愛世は、一度眼を閉じてから空をあおぎ、正直に話した。

「確かに死ぬのは怖いわ。出来れば死にたくない。…でも…私はもう長くないの」

ディアランが息を飲む。

アイセ…!

アルファスは眉を寄せ、ザリンダルをカチャリと鳴らした。