エリーシャは煙と化して、向かってくる矢をかわすと、弓矢隊に狙いを定めて一気に急降下し始めた。

「…や、めて…!」

それを見た愛世は必死で叫んだ。

だが混乱のあまり声は誰にも届かない。

「来るぞ!矢を放てー!」

「うわぁっ!」

エリーシャの太い胴体がムチのようにしなり、弓矢隊をなぎ倒した。

「特別騎馬隊、かかれっ!」

隊長の号令で、特別騎馬隊がエリーシャに斬り込む。

「返り討ちにしてくれるわ!」

エリーシャは身を翻して口から黒い煙を吐くと、騎馬隊を睨み据えた。

馬ごと噛み裂いてやるわ!

一方愛世は無我夢中であった。

ダメよ、やめて……!

「やめて!!みんな、戦わないで」

愛世は起き上がると屋根を滑り降り、転がりながら露台に着地した。

それから身を起こして歯を食いしばると、更に下へと飛び降りる。

「うっ!」

想像を絶する痛みが全身に走ったが、愛世はきつく唇を噛むとそれに耐えた。

早く、早く止めなきゃ……!

霞む眼を凝らし前方を凝視すると、愛世はエリーシャへと駆け出した。