一方エリーシャは、愛世を覗き込むと赤い舌を出しながら不気味な声で言った。

「お前は…ディアランのものか?」

心臓を握られたような感覚に、思わず息を飲む。

「違うわ、そうじゃない!ディアランは関係ない!」

無我夢中で首を振る愛世を見て、エリーシャが悪意に満ちた笑みを浮かべた。

「ならば試そう」

「やめて……!きゃあっ!」

エリーシャは愛世を空中に放り投げるとシュルリと体の向きを変え、落下し始めた彼女の肩に噛み付いた。

「きゃあーっ!!」

「アイセー!!!」

ディアランは、たまらず弓を放った。

「ぐっ」

しまった……油断した!

立て続けに放った矢が全てエリーシャに命中する。

神の祝福を受けた弓矢だけあり、一気に5本も刺さるとさすがに苦しい。

エリーシャは荒い息を繰り返しながら空中を飛び回ると、ドロス神殿の一番上の石飾りに愛世を放り出した。

「あああっ!」

愛世は石造りの屋根に叩き付けられ、激痛に顔を歪めた。

「弓矢隊、今だ!矢を放て!!」

愛世から離れたところをすかさず弓矢隊が狙い、無数の矢がエリーシャを襲った。

小癪な……先ずは忌々しい弓矢隊を皆殺しにしてくれるわ!