大丈夫、誰も見てない。

それから植え込みに身を隠すと辺りを注意深く見回し、そこから離れようと立ち上がる。

正にその時であった。

「悪鬼だ!悪鬼が出たぞ!」

にわかに騒がしくなり、兵達が四方八方に向かって走り出した。

ああ、やはりエリーシャは蘇った。

冷や汗が愛世の背中を伝い、痛いほど心臓が脈打つ。

「アイセ!!」

「きゃあっ!」

その時急に腕を捕まれて振り仰ぐと、セロが血相を変えてこちらを見下ろしていた。

「エリーシャが甦った。こんなところにいちゃダメだ!今すぐ部屋へ戻れ!う、うわあっ!!」

そこまで言った直後、セロは大きくのけ反ると苦しげに自分の首を押さえた。

「セロ?!」

「に、逃げろ……!ぐあああっ!」

「セロ!きゃあっ!」

どこからともなく現れた暗黒の煙が、セロを包んだ。

なす術もない愛世の前でセロはみるみる意識を失い、地に倒れる。

「きゃああ!セロ、セロ!!」

倒れたセロから離れると、黒い煙は一瞬で愛世を包み込んでかかえ、そのまま空にかけ登った。

「ああっ!」