セロは焦って咄嗟に辺りを見回した。

愛世の事は可愛い妹だと思っている。

……思ってはいるんだが……今このフロアにはディアラン様もいるんだよなぁ……。

こら愛世。お前がこんな風に抱き付いてる現場を見られて俺への風当たりがきつくなったらどうしてくれるんだ。

その時だった。

「わっ」

「セロ?」

案の定、ディアラン様がこっちを見ているじゃないか。

セロは刺すようなディアランの眼差しにガックリと項垂れた。

…ああ、俺の給料が……。

「おい、セロ!やけにアイセと仲がいいじゃないか!お前ら付き合ってんのか?!」

「ば、ばか!」

なんて間が悪いんだ。

ディアランが食い入るようにこちらを見ているというのに、騒ぐ兵達はまるで気付いていない。

それどころかギクリとして喉を鳴らすセロを見て、ますます皆がからかい始めた。

「アイセ、セロなんてやめて俺と付き合おうぜ!」

「あははは!その嘘ホント?」

だめだ…!お前ら、ディアラン様が…。

「アイセ、誰か好きな男はいないのか?好きな男がいないなら、本気で俺と付き合ってくれ!」

セロは背中に冷や汗を感じながら仲間達の腕を掴んだ。