……どうしよう、ダメだろうか。

僅かに厳しい老人の眼差しに愛世は不安を覚えたが、彼の答えを待つしかなかった。

「その服はどうなさった?」

これは……最初にディアランにもらい、アルファスに破られた服だ。

愛世はその質問に面食らったが、正直に答えた。

「……お城でいただいたものです」

老人が浅く笑った。

「ならその服は、アンジー族にもらったものだということだ。そしてそのアンジー族の服に、ザクシー族の伝統文化である刺繍が施されている。この意味がお分かりか?」

愛世は考えた。

ということは、アンジー族ってディアランとかお城に住んでるみんなってこと?

つまりアルファスやお城に住んでるみんなは、アンジー族。

……じゃあザクシー族は……。

老人は身を乗り出し、のめり込むように愛世を見上げて唇を開いた。

「つまりあんたの着ているその服は、ティオリーン帝国の民が作ったものだ。そしてその服に施されている刺繍は、あんたが山賊と呼んだザクシー族の伝統文化だよ」

「……っ」

愛世は心臓を掴み上げられたような気がした。

山賊と呼ばれたザクシー族の伝統文化を……ティオリーンの民、アンジー族が……。

老人は愛世に冷ややかな眼差しを向けて続けた。