「……分かってる……」

愛世はその通りだと思った。

アルファスは愛世を胸に抱いたまま続けた。

「アイセ。ディアランの事はもう忘れろ。俺を見ろ。お前に対する俺の熱さを感じろ。俺ならお前を誰よりも幸せに出来る」

そして彼女の瞳を眩しそうに見つめた。

「アイセ、俺を選べ。そしたらいつかお前はこの恋をただ懐かしみ、良い思い出に出来るはずだ」

「アルファ…」

アルファスは愛世に口づけて言葉を奪った。

否定的な言葉を聞く暇があるなら、抱き締めて自分の想いを伝え、彼女を温めたかったのだ。

優しくてそれでいてわずかに強引なキスは、アルファスらしかった。

アルファスの腕の中は温かく心地好いのに、胸に浮かぶのはディアランの姿ばかりで、苦しくて身体が裂けてしまいそうだ。

愛世は思った。

ディアランを忘れてアルファスを好きになれたら、どんなにいいだろう。

憧れではなく本当にアルファスに恋ができたら、どんなに素敵だろう。

でも、でも…。

あまりにも辛すぎて、愛世はこれ以上思いを言葉に出来なかった。

一方唇を離し愛世の瞳を見たアルファスは、愛しいと思う気持ちを押さえきれず、再び彼女にキスをした。

以前、愛世を汚してやろうとして唇を奪った事を思い出し、それを無かったことにしたくて今度は大切にキスをした。

あの時はディアランに拾われ、城に転がり込んできた愛世の全てが怪しく感じたが、今は彼女を心から気に入り、愛している。

けれど、これ以上強引な行動には出たくない。

「ゆっくり眠れ」

アルファスは再び身を離すと愛世を寝台に横たえ、静かに部屋を出た。