山本さんは、何も声をかけることもせずに、ただただ黙ってそこにいてくれただけだった。

だいぶ泣いていた早紀だったが、やっとの思いで顔をあげた。

そして、目の前でじっと見守ってくれていた山本さんに、


「ありがとうございます。」


とだけ言いながら、早紀はリングを受け取った。


「やっと、もう一人の持ち主に会えたんだね。」


と山本さんは言いながら、早紀の顔を見た。

早紀は、頭の中が光輝との思い出で一杯だった。