……ほ







───────………ほ








──季蛍!










「ん」









眩しくて目を開けると、ぼんやり見えたのは










「……蒼?」








なんで……?









「……陽さんは無事だよ」











「……あっ」










そうだ……さっき……。









「赤ちゃんは…!?」










「今産婦人科…回されてると思う」











「そっか……」












「季蛍の方がやばいな、これ」









ハハ、と苦笑いする蒼。











「……何カ所打撲してんだ…お前」











「別に打撲したくてしたわけじゃないもん」













「ハハ、知ってるって。……高島呼んでこよっか?この有様をみてもらおうかなー」










「やだっ!」










「はは、まぁいいけど」











「……怒ってる?」










「なんで?なんで怒んの?」











「………また怪我したから」












「陽さん助けたの季蛍だろ?むしろ良かった。あれで陽さん倒れて……自分追い込めんだろ、どーせ」











「………。」












「打撲なんて数日あれば治る。…まぁ…捻挫はちょっと…あれだけど」











「えっ、指…私捻挫したの?」











「左の小指」


「陽さんの赤ちゃん、大丈夫だって。元気だって」







「良かった」








「陽さんすごいらしいよ。…ごめんなさいごめんなさいって……季蛍に」









「……えっ」










「責任感じて泣き崩れちゃって」










「え…。」









「……港がさっき陽さんのこと怒ったんだよ。
無理矢理季蛍さんを連れてくんじゃない…って」











「………そうなの」









「……まぁ、でも季蛍大丈夫だからさ。そこまで酷くない……し」









「うん、私は大丈夫」

それから数分して、陽さんと港くんが私のそばに来た。






「……季蛍ちゃん…ッごめんなさい…」








「え?謝らないで下さいよ…陽さん!私は大丈夫ですよ」










「……無理矢理…私のワガママで…」









「季蛍さん…ごめんね」









港くんまで。










「大丈夫です……全然。」










「……本当に?」










「はい、どっこも痛くないので」










「良かったぁ……」








─────
────────「8度ありますね」








「嘘……どうしよ」










港くんのいない夕方の家の中。









私は今陽さんの家にいる。









ベッドに横になる陽さんは、頭が痛そうに顔をしかめていた。








「港くん、今日帰りますか?」










「んー……わかんないや…」









「陽さん…薬飲めませんもんね」










この間から数日。







陽さんの体調が悪化してしまったみたいで、心配して電話をかけたら陽さんは怠そうな声で。









だから心配で家に来た。









「……陽さん、婦人科…今から行きます?
産婦人科でなら飲める薬くれますよ」









「……いや、大丈夫」










「でも……」











「……寝てれば治るよ…ごめんね、心配かけちゃって」





「じゃあ…何か食べれそうなもの作りますね」









「ありがとう……ほんと、ごめんね」










「気にしないでください」








微笑みをかけてから、寝室を出る。







出る間際、陽さんが目を閉じるのが見えた。







お鍋がグツグツと音を立てた頃、







────カチャ








と玄関が開く音がして。









「あ、港くん…」










キッチンから出ると、リビングには港くん。










「え、あれ?季蛍さん」









「あ、おじゃましてます。」











「陽とお茶でもしてた?」










…あ、港くん知らないのか。











「いや……陽さん、今8度熱があるんです」












「はっ?」









「……陽さん…風邪…悪化してて」










「あ……それで季蛍さん来てくれたの?」









「はい…」










「なんだぁ…ごめん、迷惑かけちゃったね。ありがとう」









「いえいえ、大丈夫ですよ」











「陽風邪引いてんのか……」












作ってあったお粥の鍋を持って、寝室へ入ると…ちょうど港くんが陽さんの首に手を触れているところで。









「……病院大人しく来てくれないかな」









「さっき婦人科行くか聞いてみたんですけど…ダメでした」










「だよな」








港くんと苦笑いして、私は鍋を近くの机に置く。










「…寝てるうちに……」









そう呟いて、港くんはポケットから聴診器を出した。










「………起きませんように」










なんて、ボソッと呟いてから。








港くんが陽さんの服の中に聴診器を滑り込ませている間、私は陽さんが眠る姿をじっと見ていた。








……陽さんも妊娠してるのか。









「……大丈夫かなぁ…」









聴診器を抜いてから、港くんははにかんだ。









「……まぁ…様子見るかな。季蛍さんありがとうね」









「いえいえ」









「明日連れてってみるよ、病院」










「はい。…また何かあったら……遠慮なく」









「うん、ありがとう」









「じゃあ…帰りますね」









「うん」