「高島もついに結婚か…」
「高島先生さぁー、彼女にちゃんと誓いのキスするかなぁ?」
「………さぁ」
「…蒼はしたもんねー」
………恥ずかしい思い出を引っ張り出さないでほしい。
「………そりゃするよ。あんな季蛍みたら」
「んふふー」
「でも…彼女もアメリカから帰国して…さ、こうして日本で結婚式あげられて良かったじゃん…ね?」
「ねー!早く彼女さん見たい」
車は式場についた。
「………はーい早速ドレスに醤油こぼしてる」
「や、やっぱわかる?」
「………そこまで目立たないけど…なんで醤油こぼすかなぁ」
「今朝食べた卵かけご飯の醤油だもん」
「……朝からそんなの食うなよ」
「うるっさいなぁ、しょうがないでしょ」
「……」
「あとで落としてくるよ……」
「うん」
冬休み。
無事愛優の高校進学も決まり、もうすぐ春を迎えようとしている。
そんな…少しポカポカしてきた今日。
高島の結婚式が行われる。
彼女さんも1ヶ月間の帰国。
無事こうして結婚式を挙げられて、多分高島も喜んでることだろう。
式場に入ると、早速なんだか揉める港と陽さんの姿。
「……おはよー」
「あ。」
「何を揉めてんの…?」
「陽が薬飲まないって……。さっきから聞かないんだよ」
「…薬、?」
「だから私大丈夫だってあれほど言ったじゃん!!恥ずかしいからやめてよ、薬飲まないだなんて人聞きの悪い…」
「…もういいよ、わかった。そのかわり…後から具合悪いはナシだよ」
「わかってる…」
「じゃあ……行きますか」
式場の席は丸くなっていて、そこには俺と季蛍と陽さんと港…の四人で座れる形だった。
奏太たちもきっとどこかにいるだろう。
高島のタキシード姿、楽しみにしてたりする…俺。
────新郎新婦入場
主治医の結婚式に出るって、なんだか少し…晴れがましい。
「高島かっこいいじゃん…」
声をもらす蒼に、私も頷く。
「えっ、彼女さん美人…。高島先生…すごい」
「高島いい彼女狙ったな」
赤いドレスを身にまとった彼女さんは、高島先生よりも背が低くて、髪の毛は茶色がかっていた。
ただ気になるのは、さっきから席を外している陽さんがなかなか戻ってこないこと。
港くんも、気になっているのか時計ばかり見ている。
トイレへ行くと席を外した陽さんだけど…
いくらトイレだからといって…遅いと思う。
「ね、ちょっとトイレ行ってくる」
「さっき行ったばっかじゃん…?」
心配そうに目を向けた蒼…
「あ、醤油落としに行こうと思って…」
「……あぁ。」
二回ほど頷いた蒼を後に、席を立った。