「どうしたの?」
不思議そうに見つめられ、少し戸惑いながらも、話し始めた。
「龍とは、いつ知り合ったんですか?」
「龍とは大学で知り合ったんだ。
それから、あいつは大手企業に就職し、俺は調理の見習いとして修行を積んでいったんだ。
その頃にあいつの会社が倒産して一気に生活が苦しくなって、よく俺があいつに飯を食わせてやってたんだ。」
だから、命の恩人なんて言ってたんだね。
「そうだったんですね!
二人の絆の深さには驚きました。
龍が事故にあったあの日は、何があったんですか?」
「あいつ、俺の店に来た時、少し休んでから出て行ったんだけど、少し疲れてるみたいで…それから少しして、急ブレーキの音と共にものすごい音がして外に出てみたら、フロントガラスがひび割れた車があって、すぐ近くであいつが倒れてたんだ。
大丈夫か?って言ったら、海に行けって声を振り絞って言うんだ。
取りあえず救急車を呼んで、乗り込もうとする俺にやっぱり海に行けって言うんだ。
仕方なく救急車から降りて海に向かった。
そこには叶ちゃんがいて…
叶ちゃん、愛されてるな…」
言葉の代わりにあふれる涙。
龍は、自分のことばかり考えてたって言うけど、違うよ。
あたしのことばっかりじゃん。
ごめんね…ありがとう…。