だれかが窓の外をのぞいている。

それは僕と同じくらいの年頃の少女だった。

その子が何かを指差すと父親らしき影も窓の方に近づき、その方向を見ている。

その影ははっきりわからず、父さんのようなそうでないような。

僕は確かめるために、父さんの携帯を鳴らした。

「この人は父さんではない」

僕は呼び出し音のなる数秒、そう祈り続けた。

「はい、島野です」

僕はまばたきもせず、窓に映る影を見守った。

その影は、呼び出し音が切れる直前にポケットから何かを取り出す仕草をしてそのままガラス窓に近づいた。

まちがいない。

父さんだった。

「父さん‥‥」

「申し訳ありません、ちょっと今は‥‥。後ほどかけなおします」

父さん、僕から電話が来たこと、今の家族に知られたくないんだ。

僕は現実を突きつけられた。