「パニックを起こしたのね」

沢村は静かに言った。

「コウくんはね、変化に弱いの。決まりきった世界にいることがいちばん楽なのよ。実は拍手が苦手でね。手拍子くらいなら大丈夫かなと思ってた私の判断ミスだわ」



変化……。

僕たちは拍手なんか気にもとめない。

しかし、コウにとっては耐えられない騒音なのか。



「ケンくんもアキさんも驚いたでしょう」

「あんなふうに力いっぱい頭を打ち付けて‥‥僕はどうしたらよかったんでしょうか?」

僕は興奮冷め止まない状態だった。

声がうわずっている。

「ケンくんの判断は正しかったわ。あんなふうにパニックを起こしてしまうと、落ち着くまでに時間がかかるの。私もあの状況だったら、コウくんの頭を保護するしかなかったわ。ケンくんのおかげで、コウくんはけがもしないですんだし、ありがとうね」

「先生、ぼくたちはこれからどうしたらいいんでしょうか?」

アキは泣いていた。

いつもは気丈なアキが取り乱してしまっている。

「コウくんのお母さんと相談して、それから決めるわ」

沢村はあくまでも冷静に言った。