「ふうん、なんか意外」

正直な感想だった。

コウという少年が音楽に興味を持っているというのには違和感があった。

ただじっとピアノを見ているだけで、テンションは低いし、とても興味があるとは思えなかった。


「ところで、ケンくんはなんでこんなところにいるの?」

沢村の顔が急に引き締まった。

「いえ、おなかが痛くなって保健室に行ったんですが、保健の先生がいなくて‥‥」

僕は沢村相手に言い訳しているのが、我ながらばかばかしかった。

「そう。おなかの調子が戻ったなら、早く教室に戻りなさいよ」

沢村はそう言うと、コウを連れて音楽室を後にした。



五時間目修了のチャイムが聞こえる。



そろそろ教室に戻ろうか。

僕はピアノのふたをそっと閉めた。