「あのさ、俺、親父に頼んで、ゆっくり発音したのを録ってきたから」

ユウキが遠慮がちに言った。

「俺のせいでクラスの雰囲気が悪くなっちゃって‥‥罪滅ぼしって訳じゃないけど、親父は商社だから仕事で英語使ってるしさ。役に立てばって思って」

一瞬クラス全体が静まり返った。

ケンを怒らせたユウキのことを、あれ以来、みんなが避けていた。

いやな空気で満たされた。



しかしそれをものともせず、アキが言った。

「ありがとうね、ユウキ」

アキはにっこり微笑む。

「私、ユウキのことムカついてたんだけどさ、あんたもあの件があってから、このクラスに居辛かったでしょ。よく学校に休まないで来たよ。根性あるじゃん!」

教室にいる全員がユウキに注目している。

「俺、人の気持ち考えないで、軽はずみにいろんなこと言っちゃって‥‥」

「もういいよ。ユウキだってもう十分罰を受けたんだ。この話はもうおしまいね!」

「ありがとう‥‥」

ユウキの目にうっすら涙が浮かんでいた。

「じゃあ、ユウキのお父さんの英語レッスン始めるよ!」

アキの声に、みんなが集まる。

教室を包む空気はすがすがしかった。