「じゃあ歌えますか?」

「英語の勉強にもなるからって、高校生の時授業でも歌ったわ。歌詞もちょっと見れば思い出せると思うんだけど」

「そしたら、早速ここで歌ってください。僕がピアノ弾きますから」

「ちょっと待って!ケンくん。何を考えているの?」

僕は唐突に弾きはじめた。

コウの母は初めは戸惑っていたようだが、おそるおそる小さな声でピアノに合わせて歌い始めた。

思ったとおりだ。

コウの母の歌声は、透明感があって心地よい。

普段話しているときも、魅力的な声だと思ってはいたが、実際聞いてみると、想像していた以上に、聞いている人を和ませる。