コウがいつもどおり僕にピアノの鍵を渡した。

「コウ、よろしくね」

「よろしくね」

コウはいつもと同じように僕の言葉を繰り返す。

僕はあらかじめ用意してきた紙を見せた。

「○今日は『トップ・オブ・ザ・ワールド』をやります」

コウはいつもと同じように、それを口に出して何度も読んだ。

今まで僕らのレパートリーはクラシックに限られていた。

初めてのポップス。

コウはどう感じるのだろうか。

コウはピアノの下に潜って僕の演奏を待っている。

僕は自分自身にリラックスさせるよう言い聞かせながら、弾き始めた。