「やだあ、コウくんこんなところにいたの。先生いろいろ探して回ったんだから!」

沢村先生が入ってきた。



呼吸が乱れている。

音楽室は三階だ。

一気に階段を駆け上ってきたのだろう。



「あら、ケンくん」

沢村はようやくケンの存在に気づいたようだった。

「こんなところで何やってるの?」

「え、えっと‥‥」

「もしかしてピアノ弾いてた?」

ケンは黙ってうなずいた。

「どうりで!」

沢村は一人納得が行ったようにはしゃいでいた。



「先生、こいつ誰なんですか?」

僕は、沢村が勝手にはしゃいでいるのが勘にさわった。



「いやあ、ごめんね、紹介遅れて」

沢村がちらりとコウの方に目をやった。