「ありがとうね。タンポポの子達は認められることが少ないでしょ。同じ人間なのに、住む世界が違うみたいに思う人が多くて‥‥」



沢村の言葉は耳にいたかった。

ケンだってほんの少し前までは、住む世界が違うと考えていた。



「でもケンくんのように思ってくれる人がいて、私も嬉しいわ」



「ちがうんです。僕だってコウのピアノを聞くまでは、別世界の人ってふうに思ってたんだ‥‥」



沢村は僕の肩をぽんぽんと叩いた。

そんなことはどうでもいいよ、気にするな、と言っているようだった。






教室の後ろに貼られたコウのグランドピアノは燃えるような赤で塗られていた。

黒鍵も赤。

白鍵以外はすべてが赤だった。




これが、コウの中に秘められた情熱なのだろうか。