「沢村先生」

職員室をのぞくと、沢村がケンに気づいて手を振るような仕草を見せた。

「ちょっといいですか?」

沢村は廊下に小走りでやってきた。

「コウくんのことでしょ?」

「はい」

「すごいでしょ、あの子」

沢村は頬を紅潮させて言う。

「なんて言ったらいいか‥‥」



そう。

本当になんと表現したらいいのかわからなかった。



「よかったらこっちで話さない?」

沢村はタンポポ学級にケンを招きいれた。



放課後だ。

子どもたちは既に帰ったあとだった。



がらんとした教室の中に、机が六個置かれている。

この一つがケンの席なのだろう。



沢村はケンに椅子を勧めて言った。

「あの子はケンくんやみんなが簡単にできることができなかったりするけど、ちゃんと神様が考えてくれてたのかな」



沢村はずっと話したかったことをやっと話せる状況になったのだろう。

溢れる気持ちを抑えきれない。