アキは袴田の目をまっすぐに見つめた。

「なんで、こんなところまで。ケンに会ってどうする?」

袴田はアキのことを試しているようだった。

「あの、おじいさんはケンのことどこまでわかっているんですか」

「何を言い出すんだ」

いきなり初対面の女の子に思いもしないことを言われて、袴田は憮然とした。

「怒らないで聞いてください」

アキは門前払いを食わないように、慎重に話を進めなければと心に決めた。

「おじいさんは今までどんなふうにケンが過ごしてきたか、知ってるんですか?」

「言わなくともわかっとる。それにおまえに言われる筋合いじゃない」

「私はわかります。ケンがおじいさんに対して負い目を感じていること。自分はおじいさんに対して意見などできる立場じゃないということ。だからすべておじいさんの言うことに従おうと決心したこと」

袴田はアキの話が進むにつれて怒りも収まってきたようだった。

アキの言葉に熱心に耳を傾けている。

「おまえさんにそんなこといっとったのか」

アキは黙ってうなずいた。



袴田は空を仰いだ。

そして大きなため息をひとつついた。



「こんなところで立ち話もなんですし、うちに上がりませんかのう」

「いいんですか?」

「ゆっくり話を聞かせてほしい。ちょうどケンはばあさんと出かけとるから。そちらの方もいっしょに」

袴田は車の中を見つめて言った。