「どうした?」

「いやあさあ、子供は結局無力だなって思って」

父は黙ってしまった。

「違う違う、父さんたちの離婚のこと言ってるんじゃないよ」

アキはあわててとりなした。

「母一人子一人の友達がいたんだけど、その子のお母さん自殺しちゃったんだ。だから、その子はお母さんの実家に転校することになって‥‥」

「つらかっただろうな」

父は目を潤ませていた。

「うん、たぶん。でもね、その子、受け入れちゃってるの。自分に選択の権利はないって言って。だからさ、子供って結局大人に守られてじゃないと生きていけないんだなって失望したっていうか‥‥」

父はコーヒー飲み干した。

「アキ‥‥」

「ん?」

「そんなこと言うなよ」

父は真剣な顔でアキを見つめていた。