何もいえなかった。

アキが自分の気持ちをどんなに吐露しようと、ケンがアキの想像する以上のものを抱えてしまっている今、それはなんの意味も持たないだろう。

「でも‥‥。ケンは本当はどうしたいの?」

「本当って‥‥俺にはさ、選択する権利なんかないんだよ。父さんのところなんて行けるわけないんだし、じいちゃんたちが置いてくれるだけで十分すぎるくらいなんだよ。だから、じいちゃんが東京と縁を切れと言えば、俺はそれに従う」

「そんなにまで‥‥」

「今俺にできることはそれしかない。せめて母さんのしでかした過ちを少しでも償わないとな」

「なんで‥‥?」

ケンはすぐに答えなかった。

数秒の間があった。



「アキだって、同じ立場だったら、俺と同じことすると思うよ」