「全く馬鹿な娘だ‥‥」

祖父は声を詰まらせた。

ひとしきり置いて、ケンの顔をゆっくり眺めた。

「冴子によく似ている。同じ目をしてるな」

ケンは感じていた。

祖父が今、自分を通して娘冴子を見ていることを。

「本当によく似ているわ」

祖母の声が震えた。

「なんで‥‥なんで‥‥冴子はこんな姿で戻ってくることになったのかしらね」

祖母が泣き崩れた。

冴子の葬儀は実家で執り行うことになっていた。

父は自分で葬儀を出すつもりでいたが、冴子の両親の気持ちを優先することにした。

冴子の遺体はドライアイスでくるまれ、十三年ぶりにようやく実家に帰ることができたのだった。