「しかも半端じゃないわよ。ちょっとケタが違うからね」

「いくら?」

「もともと借りた金額は大したことないのよ。でもさ、借りた相手が悪かったのよね。父さん脅されて、次から次へと借金を返すために、別のサラ金を借りさせられちゃって、もう相手の思う壺よ」

サラ金?

父さんが?

「最終的に私が知ったときには、私たちが働いて返せる額じゃなかったからね」

「母さん、父さんを見捨てたの?」

幸はすぐに返答するのに躊躇していた。

安易な言葉で娘に誤解されたくなかった。

「もしもこれがはじめてだったら、母さん破産しても一緒にいたと思うわ」

幸はタバコに火をつけた。

眉間にしわを寄せて吸い込んだ後、ゆっくりと煙を吐き出した。

離婚問題でごたごたしていたとき、幸はよくこんな顔してタバコを吸っていた。

眉間にしわを寄せてまでタバコなんか吸いたくない。

アキは母のそんな姿を見るたびに反発していた。

「父さん、3回目なのよ。サラ金に手出したの。2回とも母さんが尻拭いしてきたわ。まあなんとか返せる額だったし。でもね、今回で気がついた。あの人、これからもまだ何回だって同じことするわ。そう思っちゃったら、もううっとおしくてね」

幸はあごを少し上げてまた煙を吐いた。