「お母さんてさ、結局なんでお父さんと別れたの?」

仕事から帰ってきた母親と遅い夕食をとっているときに、アキが突然言い出した。

「離婚の理由?」

「そう、それ」

アキの母、幸の箸はいったん止まったが、娘に心の動揺を悟られないようにと、努めて冷静に振舞った。

「なんでかな‥‥。なんでだと思う?」

「言ってもいい?」

「ええ、どうぞ」

「怒らない?」

「もちろん怒らないわ」

「たぶんさ、お母さんはお父さんのことうっとおしくなっちゃったんだよ」

「うっとおしい?」

幸は思わず吹き出した。

娘の目にはそんなふうに映っていたのか。

「そう、後半。もう勘弁してって感じだったもん。父さん、かわいそうって思っちゃった」

「かわいそうね。そうね、かなり冷たかったかもね」