「アキさん、私とちょっと話をしない?」



沢村はアキを屋上へ誘った。

冬の晴れた日。

日中は日差しがあるのでそれなりに暖かい。



「ここ、座ろう」

沢村は給水タンクの支えになっているコンクリートの上に腰を下ろした。

アキも素直に従った。


「アキさん、ありがとうね」

アキは驚いた顔で沢村を見つめた。

「クラス発表のことよ」

「あ‥‥」

「素直に感動したわ。コウくんの担任だからじゃなくてよ。一聴衆として感動したの」


嬉しかった。

一聴衆として感動した……。

ケンに聞かせてあげたいよ。



「ありがとうございます」

「本当にすばらしかった。体が震えたの」



沢村は遠い昔の話をするように、懐かしそうに言った。