冷たい手。

母の手は硬く、冷たくなっていた。

握り返しても人形のようになんの反応もない。



死ぬっていうことはこういうことなんだ。

ケンは何も知らないけれど、全てを知ってしまったかのような思いでいた。



僕の存在ってなんなんだろう。



僕は父さんと母さんの子どもなのに、父さんはもう僕の父さんでないし、唯一のつながりの母さんも死んでしまった。

母さんは自分自身を無にしてしまった。

でも僕はまだ生きている。



宇宙に漂うチリのように、心もとない存在。

糸が切れてしまった凧は、いつか地上に落下する。

僕も落下してしまうのか。



母さん、神様っているんだよね。

僕は神様に嫌われているんだ。

たぶん生まれる前から。

だから、きっとこんなばちが当たるんだよ。



母さん、ずるい。

自分だけ神様に許してもらおうとしたんでしょ。

僕はどうしたらいい?