コウの母は、クラス発表を見たあと帰宅途中にケンのアパートの前を通っていた。

警察車両が停まり、警官が部屋の中に入るのが見えた。

近所の人が立ち話をしている。

「自殺ですってよ」

「精神科に通ってたって噂聞いたことあるわ」

「え、でも子どもいたわよね」

「6年生の男の子がいたはずよ」

声を潜めての話ではあったが、すれ違いざまに確かに聞こえた。



そんなことがあっていいの?

あんないい子にこんなむごいこと‥‥。



コウの母はケンの顔を思い出していた。


「僕はもう十分、たくさんいろんなものをもらっちゃったから、これ以上なんて言ったらばちが当たりますよ」

そう言って寂しそうに笑った。

あなたは何ももらっていないじゃないの。

ばちなんて当たるわけないのに‥‥。

でも、ケンはこう考えるのだろうか。



「母さん、僕ばちが当たっちゃったんだね」