「母さん、普通の心の状態じゃなかったんだよ。だから‥‥ケンは自分を責めるな‥‥」

ケンのなかで怒りが爆発していた。

「じゃあ、どうしてこんなことになっちゃったんだよ。普通じゃなかったんならどうして死なないように誰かが助けてあげなかったんだよ。僕は、一緒に暮らしていたのに、なんにもしてあげないで、母さんの話も聞いてあげないで、自分のことしか考えていないで‥‥。なんでこうなっちゃうんだよ?」

ケンは父につかみかかっていた。

押さえきれない感情の持って行き場が父のところしかなかった。

父は抵抗することなく、ケンにされるままになっていた。


「卑怯だぞ、父さん。そうやって自己満足で罪滅ぼしでもしてればいいんだ」



暗いこの部屋の中で、ケンの悲痛な叫び声だけが響いていた。