ロープを台所から探してきた包丁で切り、冴子の体を下に下ろした。

既に体が冷たくなり、死んでいるのが島野にもわかった。

それでも島野は救急車を呼んだ。

冴子の死を受け入れたくないという思いがそうさせた。

島野は冴子を抱きかかえて、自分の罪深さを呪った。

「冴子、ごめんな。冴子‥‥」



冴子の見開いた目が冴子の苦しさを物語っていた。

島野は冴子の目をそっと閉じた。




「警察に聞いたら、明け方に亡くなったそうだ」

父がぽつりとつぶやいた。




じゃあ僕は母さんが死んだのも知らないで

朝食を作り手紙を書いたっていうの?

僕は母さんが苦しんでいるのも知らないで、脳天気にクラス発表だなんだと浮かれてたん
だ‥‥。




ケンは冴子の亡骸にしがみついたまま離れようとはしなかった。



「ケンには言わなかっただろうが、母さん、ずっと通院していただろう?」

父の声が背中で聞こえた。