冴子にはもう島野を呼び寄せる術はなかった。

おそらく何をしても疎まれるだけだろう。

呪縛から解かれた島野は二度と冴子のもとを訪れることがないことを、冴子自身がいちばんよくわかっていた。

「なんか、夢みたい」

冴子は他人事のように笑った。

「ぽーんと打ち上げられた花火はぱっと開いてぱっと散るの。まるで私ね」

冴子は夏の夜空を彩る花火と自分自身を重ねていた。

「花火が散ってしまったって知ったら、最後にあの人は私のところに来てくれるのかしら‥‥」