「おなか、すいた」

僕は冷蔵庫をあさる。



どんなにつらいときも、腹は減る。

明けない夜はないと誰かが言ったが、その通りだ。

泣きながら「この世の終わりだ」「これ以上最悪なことなんてない」と世の中を呪った夜も、いつの間にか朝日が差し込んで、何事もなかったかのように、また一日が始まる。



父が僕たちの前から姿を消した次の日も、いつもと何も変わることなく、朝がやってきた。

母は臥せったきり、寝室から出てこなかったが、僕は自分でも驚くほど、淡々と朝食をとり学校へ行った。




唯一いつもと違うのは、母の分の朝食も作ってテーブルに置いておいたことだけだ。

「母さん、行ってくるからね」

普段よりも明るい声が自然と出た。




僕の心は麻痺してしまっているのだろうか。