冴子は、島野の職場であるバイト先も辞め、大学とアパートの往復に徹していた。

とにかく両親に怪しまれないよう、模範的な女子大生を演じなければならない。

つわりでつらいときも一人、図書館に通い、レポートを仕上げた。

担当教授も熱心に学ぶ私の姿を見て、大学院進学の提案をしたほどだ。

「冴子、変わったよね。別人みたい」

親しくしていた友人たちはみな口をそろえて言った。

善良な人たちはみな私が将来のことを真剣に考えてやっとやる気になったのだと、全て好意的に受け止めてくれていた。



とにかく誰にも知られないように私は細心の注意を払い、産婦人科の受診さえもせずにごく普通の女子大生を装っていた。