こうなることは初めからわかっていた。



「おまえは自分のやっていることがどういうことかわかっているのか?」

普段穏やかな父親に頬を思いっきりひっぱたかれた。



このとき既に私は妊娠六ヶ月に入っていた。

中絶をできる時期を過ぎていた。



父は拳を握り締めて私を見下ろす形で震えていた。



東京のお嬢さん大学に進み、就職、結婚と親の思い描くとおりの人生を進むはずだった。

しかしそれが全て崩れてしまった。

母は一人娘のしでかしたことを受け入れられずただただ泣くばかりだった。



私は妊娠に気づいてから、島野を引き止めることばかりを考えていた。

妻子ある島野を自分のものにするには、私の妊娠は最高の武器になる。



これがもし田舎の両親に知れたら、無理やり中絶させられるに違いなかった。

私はこの時期に入るまで、誰にも気づかれないようひっそり身を潜めてることに決めていた。