「僕はコウのお父さんがコウたちを捨てて逃げたってことを聞いてものすごくショックを受けたんです。でもまさか自分の父親が同じことをしていたなんて‥‥。しかも捨てられた不幸の上に僕の幸せが成り立っていたんだと思ったら、自分の存在価値ってなんだろう。僕は誰かを不幸せにするために存在しているのかと思ったら、どうしようもなくなって‥‥」

アキも泣いていた。

僕の手を握ったまま静かに泣いていた。

コウの母がゆっくり言った。

「ケンくん、酷なことを言うかもしれないけど、あなたはその運命を受け入れて生きていくしかないのよ。確かにあなたの人生は幸せとは程遠いものかもしれない。でもね、それはあなたに与えられた宿命よ。これに負けて嘆いているだけでは、あなたの運命はその程度のものよ」

「運命を受け入れる?」

「そうよ。私もあなたと同じ。自分の運命を呪ったわ。私たちを捨てて逃げたコウの父親を恨んだわ。恨むことで生き続けた時期もあった。でもね、それだけじゃダメだって気づいたわ。うんと時間はかかったけど、運命を呪っているうちは死んだのと同じ。運命を受け入れて初めて生きることができるの」

運命を受け入れて生きる……?

僕にそれができるのだろうか。