ケンは父親に会いに行って全てを知ってしまったことを包み隠さず話した。

父が障害のある娘を授かったころに受け入れられず、僕の母のところに逃げてしまったこと。

僕を授かり、僕を愛してくれたが、おそらく僕への愛情は捨ててしまった娘に対する罪滅ぼしであったこと。

長い年月をかけて、父がようやく娘と向かい合おうと決心したこと。



コウの母もアキも最後まで黙って聞いていた。

ゆっくりとコウの母が切り出した。

「ケンくんのお父さんは弱い人だったのね。でもね、ケンくんを愛したのは受け入れられなかった娘さんに対する罪滅ぼしのためなんかじゃないよ」

どうして僕はこの人に自分の弱さをさらけ出すことができるのだろう。

「ケンくんだからお父さんはケンくんを愛したの。今は会えないかもしれないけれど、お父さんがケンくんを愛したという事実はずっと変わらない真実なんだよ」

そうだね、僕は他の誰かにそう言ってほしかったんだ。

僕が確かに父に愛されたということを。

僕の体の中にいつのまにかできていた深い湖にはどれだけの涙があるのだろう。

僕はアキの前で泣くということに対して何の抵抗もなく、ただただ泣いた。

人はこんなに泣くことができるのか。

アキが黙って僕の手を握っていてくれた。