僕はなぜ、父が自分の家族を捨てて僕の母の元に来たのか、そしてなぜ再び元の家族のところに戻ろうと決意したのか、全てがわかったような気がした。

父さんは、コウの父親と同じように、障害をもった実の娘を受け入れられず逃げ出してきた弱い男で、しかし、僕と暮らした12年という年月をかけて、受け入れる覚悟を決めたのだろう。

そして父は命が消えるまで、自分の弱さからしでかした過ちを悔い続け、償い続けなければならないのだろう。

「美佳子、大丈夫だよ」

父さんは娘をいとおしそうに見つめた。

「だって、この子泣いてる‥‥」

「この男の子はね、パパの大切な人なんだ。そうだね、美佳子と同じくらい大事なんだ。
でもね、ずっと会えなくて寂しくて悲しかったんだけど、今、やっとここで会うことができたの。だからね、あんまり嬉しすぎて涙が出ちゃったんだよ」

美佳子はほっと胸をなでおろした。

そして僕に向かってこう言った。

「同じくらい大事って……。もしかしてあなたは私のお兄ちゃん?」