「鈴音さんとは婚約破棄したんだろ?」

百合矢は知っている。

鈴音との事は、百合矢に知れるのは分かっていた。

しかし、雛子の事もバレている。

百合矢に話がいかないように、慎重にしてきたのに…

(やられた…)

百合矢に先を越された。

百合矢が呼んでいた男女の正体は…


「いやー。遅れてすみませんね」

男が笑いながら言った。

「はじめまして…」

可愛い少女。


「桜華…こちらがお前の未来の伴侶になる方だ…可愛らしい方じゃないか」

「まぁ…」

明らかな営業スマイルを向け笑いながら百合矢は、新たな婚約者になる者を紹介してきた。

さらに…


「神楽 晋也です。この子は娘の」

「神楽 祐希奈です」

自分が、どう微笑めば一番綺麗に見れるか知っているのだろう。

桜華に媚びて笑った。

しかし、桜華が衝撃を受けたのは、祐希奈の笑顔ではなかった。

「神…楽…」

雛子と同じ名字。

「雛子ちゃんがお世話になってるみたいで」

晋也が申し訳なさそうに言ってきた。

そう、この二人こそ、雛子の運命を大きく変えた物達だったのだ。